県立こども病院(安曇野市)が、集中治療が必要な小児患者の初期対応を早めるため、信州大病院(松本市)が運用するドクターヘリに医師を同乗させて県内の病院に出向く態勢づくりを進めていることが9日、分かった。ドクターカーよりも早く患者のもとに到着でき、呼吸不全などの重症患者の後遺症防止などが期待できる。信大側の手続きが整えば、来年1月にも協定を結んで運用を始める。
呼吸不全や、血液が十分に流れない循環不全などの重症例では、小児集中治療の専門医ができるだけ早く処置を始めることが重要になる。こども病院は現在、医療機器を装備し、医師が同乗するドクターカーを備えており、県内の病院からの要請を受けて出動している。2014年度の出動件数は337件だった。
ただ飯山市や飯田市へは、ドクターカーで1時間半ほどかかる。集中治療の開始が遅れると、回復の遅れや後遺症の恐れが増す。北村真友(まさとも)医師(44)は「もっと早い段階から処置に携わっていれば、という症例が幾つかあった」とする。
こども病院は、信大の高度救命救急センターとドクターヘリの運用法を検討した。信大の医師と看護師が搭乗したヘリは、信大を飛び立った後、こども病院で医師を乗せ、要請のあった病院へ向かう流れを想定している。信大のヘリは通常、県境地域に30分ほどで到着することができるという。
ドクターヘリと同時にこども病院のドクターカーも出動する。ヘリで到着した医師らが初期対応をした後、患者の状態によってヘリとドクターカーのどちらで病院に搬送するかを決める。
運用法の検討の一方、こども病院の医師は、ヘリ搭乗の安全講習を受けるなど準備を進めてきた。両病院の協定内容はほぼまとまっており、信大病院総務課は「来年1月の診療科長会で承認されれば協定を結ぶことになる」としている。 (2015年12月10日信濃毎日新聞)