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ドクターヘリの装備と機体
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ドクターヘリの機体と
内部を徹底解剖

ドクターヘリの最大の目的は、医師や看護師が現場に赴いて、その場で治療を行うこと。ヘリには、傷病者の命を救うために最低限必要な医療機器が装備されています。さらに、医療器具や医薬品などが入った「救急バッグ」も用意されていて、フライトドクターやフライトナースはそれを持って救急車内で待つ傷病者の元に駆けつけます。

ドクターヘリの機内

ヘリの機内は狭く、医療機器があちこちに配置されているため、フライトドクターやフライトナースの座れるスペースはほんのわずかです。搬送中は騒音も大きく、気象条件によっては揺れることも。そのため、機内での治療は難しく、必要な治療は救急車内で行い、安定させた上で患者はストレッチャーで機内へ。フライトドクターやフライトナースはモニター監視や輸液管理をしたり、消防無線と医療無線で消防本部指令室や搬送先の医療機関とのやりとりなどをしながら搬送します。

ドクターヘリに装備されている医療機器の種類や内容は、医療機関によって少し異なります。通常の診療で用いている慣れた医療機器、医療器具を使うほうが望ましいからです。ここでは、東海大学医学部付属病院(運航会社:朝日航洋)のドクターヘリ(BK117)をご紹介します。
パイロット
整備士
フライトドクター
フライトドクター
ストレッチャー
フライトナース
付き添い
ヘリコプターの前部座席には、パイロット(①)と整備士(②)が乗り込みます。

パイロットらの座席に背を向けるように座席が2つあり、そこにフライトドクターが着席(③④)。フライトナースはストレッチャー(⑤)の横にある座席に座ります(⑥)。フライトナースの隣には患者の付き添いが同乗する場合の座席(⑦)もあります。すべての座席にはヘルメット(ヘッドセット)が用意されていて、フライト中はこれを使って消防・医療無線で消防本部指令室や搬送先の医療機関とやりとりをします。天井には航空無線と消防無線・医療無線を切り替えるオーディオセレクターがあります。

傷病者を乗せたストレッチャーは、後部側のハッチを開けて機内に運び入れます。
カメラ1
ドクターヘリの操縦席の間から後方を撮影。右に傷病者を乗せるストレッチャー、左にフライトナースの座席がある。
フライトナースの座席。ヘルメット(ヘッドセット)が用意されている
消防無線と医療無線を切り替えるオーディオセレクター 脈拍、心拍数、呼吸、血圧などをみる搬送用の生体情報モニター 不整脈や狭心症、心筋梗塞などが確認できる心電図モニター 血圧低下によって起こる「ショック状態」を確認する血圧計 医療器具や医薬品をコンパクトに詰めた救急バック
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カメラ2
フライトナースの座席とストレッチャーの間から、ドクターヘリの前方を撮影。フライトドクターが2名搭乗するときは、左にメインのドクター、右にサブのドクターが座る。
前方の様子。足元や脇もよく見える構造 操縦席。パイロットはさまざまな計器を見ながら航行する
止まった心拍を再開させるためのAED(自動体外式除細動器) 3段になった引き出しには医療器具や医薬品などが用意 機内で酸素吸入が必要になったときに用いる酸素ボンベ
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カメラ3
ストレッチャーを搬入するハッチから見た機内の様子。ストレッチャーはドクターヘリ専用のもので、重さ40~50kg。同乗する整備士が、ストレッチャーの搬入・搬出を行う。
患者を安定して運ぶために用いる専用のボード(固定具)
     
後方の様子。ストレッチャー(寝台)が搬入できるように、扉が左右に広く開放できる
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救急バッグの中身

ドクターヘリで現場に到着したフライトドクターやフライトナースは、点滴セットなどの医療器具や医薬品が入った救急バッグを持って、救急車内で待つ傷病者のもとに向かいます。バッグの中身は医療機関によって違いますが、東海大学医学部付属病院では「成人用」と医療器具のサイズが小さい「小児用」の2種類を用意しています。

現場では「機材が足りないから救命治療ができない」というわけにはいきません。そのため、同院の場合、応用が利く医療器具を入れてあります。
どこに何が入っているか一目で分かる
救急バックの本体。重さは11kgほどある
呼吸状態を保つために使う気管挿管セット
意識障害があるときに鑑別に使う血糖値測定器
気管を切開して気道を確保する気管切開セット
心肺停止した患者に使う点滴のセットなど

ドクターヘリの所有者は?

ドクターヘリはヘリコプターの運航会社が所有しています。ドクターヘリの導入は都道府県が決め、医療計画に位置付けられますが、運営は都道府県の要請を受け、「救命救急センター」を持つ基地病院が行います。その一方で、ドクターヘリに使うヘリコプター、パイロット、整備士、CS(Communication Specialist)(※)は、運航会社が配備します。 ドクターヘリに装備する医療機器に関しては一定の基準のもとで、運航会社と基地病院が調整し、細かい仕様を決めていきます。

※CS(Communication Specialist):ドクターヘリの出動要請が入った際にクルーに出動指示を出し、そのあとは消防本部指令室とやりとりをしてランデブーポイントを調整。飛行中は運航支援業務を行いながら、消防や医療機関との調整を図るなど、さまざまな業務を担う。

ドクターヘリの機種

傷病者を運ぶドクターヘリには、機内で治療ができるためにさまざまな基準が設けられています。例えば、「パイロットと整備士のほか、フライトドクター、フライトナース、患者など4名以上が搭乗可能であること」「一般の患者だけでなく、妊産婦の収容や保育器などの搬入が可能であること」「搭載している人工呼吸器などに2時間以上100%酸素などを供給できるシステムがあること」などです。

こうした基準を満たし、国内で運航しているドクターヘリは全部で5種類。その特徴は以下の通り。ちなみにテレビドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』に登場した機種は「MD902」です。
BK117(C2)
後方キャビンに5人乗れるゆったりとしたスペース
川崎重工業と西独メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム社(現仏エアバス・ヘリコプターズ社)が共同開発した双発タービン機。機内が広く医療行為がしやすい。
全長 13.03m(ローター回転)
全高 3.96m
最大離陸重量 3585kg
ローター直径 11.0m
発動機 サフラン・アリエル(738shp)2基
最大速度 269km/h
巡回速度 254km/h
運航可能距離 700km
搭乗者数(通常) 乗員2名+同乗者4名+患者1名
EC135(H135)
警察や消防などでも使われている範用ヘリコプター
西独メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム社が試作した原型Bo108が基本の双発表タービン機。現在は仏エアバス・ヘリコプターズ社で製造し、H135と改称されている。尾部ローターを垂直尾翼内に収めたフェネストロンが特徴。日本で最も多く導入されている。
全長 10.25m
全高 3.90m
最大離陸重量 2980kg
ローター直径 10.40m
発動機 サフラン・ヘリコプター・エンジンズARRIUS 2B2PNS×2基
または、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW206B3×2基
最大速度 259km/h
巡回速度 250km/h
運航可能距離 625km
搭乗者数(通常) 乗員2名+同乗者3名+患者1名
MD902
テールローターがない「ノーターシステム」で騒音を低減
米ベル・ヘリコプター社が救急ヘリコプターを主目的として開発した双発タービン機。
全長 12.11m
全高 4.05m
最大離陸重量 3175kg
ローター直径 10.97m
発動機 PW207(730shp)2基
最大速度 287km/h
巡回速度 278km/h
運航可能距離 760km
搭乗者数(通常) 乗員2名+同乗者3名+患者1名
BELL429
救急活動用のヘリコプターとして開発
米ベル・ヘリコプター社が救急ヘリコプターを主目的として開発。小型機としては比較的大きなエンジン出力を持つ双発タービン機。
全長 13.11m
全高 4.04m
最大離陸重量 3175kg
ローター直径 10.97m
発動機 PW207 D1またはD2(730shp)2基
最大速度 287km/h
巡回速度 278km/h
運航可能距離 761km
搭乗者数(通常) 乗員2名+同乗者3名+患者1名
AW109SP
広い横ドアで、患者の搬入もスムーズ
伊アグスタウェストランド社(現レオナルド社)が製造する双発タービン機。当初のA109は1970年代初めに開発。エンジンの強化やローターの改良などで大きく進歩。
全長 12.96m
全高 3.4m
最大離陸重量 3175kg
ローター直径 10.83m
発動機 P&W 207C (タービンエンジン) / 双発機
最大速度 311km/h
巡回速度 278km/h
運航可能距離 633km(DH仕様)
搭乗者数(通常) 乗員2名+同乗者4名+患者1名