認定NPO法人
救急ヘリ病院ネットワーク
HEM-Net

ドクターヘリを知る
歴史と実績
  • TOP
  • ドクターヘリを知るー歴史と実績

日本のドクターヘリは
外国に遅れて始まった

世界最初のドクターヘリは、1952年にスイスが山岳遭難者を救護し病院に搬送する仕組みとして創設しました。1970年代に入り、交通事故による犠牲者を減らすことを目的にドイツやアメリカでヘリコプター救急が始まり、次第に、急病人の治療や患者搬送へと用途が広がっていきました。日本で正式に運航が始まったのは2001年4月。導入のきっかけとなったのは1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災でした。その後、ドクターヘリの導入は年々増え、2022年4月現在、全国47都道府県(※)に56機が配備されています。

※ ドクターヘリを運営している関西広域連合に属す京都府を含めています。

日本のドクターヘリの沿革

History
1981年4月
日本交通科学協議会が「航空機救護搬送システム研究委員会」設置
1981年10月
川崎医科大学附属病院(岡山県)で日本初のドクターヘリによる実用化研究実施
1994年9月
「日本エアレスキュー研究会」(日本航空医療学会の前身)発足
1995年1月
阪神・淡路大震災発生。発災当日の消防防災ヘリによる患者搬送は1件のみ
1996年
自治省消防庁に「ヘリコプターによる救急システム検討委員会」発足
1998年9月
静岡県消防防災ヘリが、大動脈解離の患者を搬送。病院の医師がヘリに搭乗
1999年4月
聖隷三方原病院(静岡県)でドクターヘリの試験運用開始
1999年8月
内閣内政審議室に「ドクターヘリ調査検討委員会」設置
1999年10月
厚生省の事業として、川崎医科大学附属病院(岡山県)と東海大学医学部付属病院(神奈川県)で「ドクターヘリ試行的事業」開始
1999年12月
特定非営利活動法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)設立
2000年6月
ドクターヘリ調査検討委員会報告書公表
2001年4月
川崎医科大学附属病院で岡山県ドクターヘリ事業開始。これが、ドクターヘリの日本初の本格運用
2005年4月
大規模災害や事故に出動する「災害派遣医療チーム(DMAT)」が発足
2007年6月
「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法(ドクターヘリ特別措置法)」が超党派の議員立法で成立
2008年7月
フジTVドラマ「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」放映
2008年11月
超党派の「ドクターヘリ推進議員連盟」発足
2009年3月
総務省がドクターヘリ運航経費に一律50%の特別交付税交付金を開始
2009年11月
ドクターヘリ推進議員連盟総会
2010年3月
総務省が特別交付税交付金を上限80%に引き上げ
2010年4月
ドクターヘリ普及促進懇談会が発足
2011年3月
東日本大震災発生。ドクターヘリ18機が災害医療活動のため出動。ドクターヘリ開始後初めての大量出動。福島第一原子力発電所事故の復旧に関わっていた作業員をドクターヘリで搬送
2011年12月
トヨタ自動車と共同で「先進事故自動通報システム(AACN)」によるドクターヘリ起動実証実験実施
2013年11月
災害時にドクターヘリが自由に離着陸できるよう航空法施行規則第176条改正
2015年7月
防災基本計画に初めてドクターヘリについて記載
2015年11月
交通事故発生時の救急自動通報システム(D-Call Net)によるドクターヘリ起動システムの試験運用開始
2016年2月
防災基本計画にドクターヘリ運用体制構築と航空運用調整班設置について記載
2016年4月
熊本地震発生。日本航空医療学会による災害時ドクターヘリ出動指針実施
2016年12月
厚生労働省が「大規模災害時におけるドクターヘリの運用体制構築に係る指針」発出
2017年3月
総務省が特別交付税交付金を下限16%に引き下げ
2017年6月
国土交通省がドクターヘリ操縦士の乗務要件を2000時間から1000時間に緩和
2018年4月
D-Call Netによるドクターヘリ起動システムの本格運用開始
2018年6月
防災基本計画に災害時ドクターヘリ運用要領策定とドクターヘリ派遣計画・派遣調整について記載
2019年7月
ドローンとドクターヘリのコラボレーションによる医療を研究するための「日本ドローン・エアレスキューコンソーシアム(JDAC)」設立
2020年4月
HEM-Netがドクターヘリの「夜間運航」を研究開始
2020年7月
ドローンに関する「空の産業革命に向けたロードマップ」に「医療」が位置づけられる
2021年4月
ドクターヘリ運航経費の都道府県負担分が、普通交付税での措置となる(2機目以降は特別交付税措置)
2022年4月
香川県のドクターヘリが運航を開始し、関西広域連合に属する京都府を含め全都道府県での導入が実現
2023年4月
画像活用型救急自動通報「第2種D-Call Net」の試験運用の開始

ドクターヘリの実績の推移

ドクターヘリの本格運用が始まった2001年度以降の導入都道府県数・機数と出動件数は次のとおりです。機数が2007年度と2009年度を起点として急激に増えていることに注目。2007年6月にはドクターヘリ特別措置法が成立し、2009年3月には導入都道府県の財政負担を軽減するための特別交付税交付金が始まりました。

阪神・淡路大震災をきっかけに導入

1995年1月17日、兵庫県南部地方を襲った阪神・淡路大震災では、家屋の倒壊などにより6,437人の死者・行方不明者を出しました。 多くの地域で道路が寸断されたことで救急車の出動が困難をきわめるなか、消防防災ヘリの救助活動に期待がかかりましたが、当日に搬送された傷病者はたった1人、3日間の合計でも17人と非常に少ないものでした。

これを機に、災害時の医療救護活動には救急医療を専門とするヘリコプターが必要であるとの声が高まり、1999年8月に内閣内政審議室に「ドクターヘリ調査検討委員会」が設置され、2001年4月のドクターヘリの本格運用につながりました。

東日本大震災で活躍

2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の巨大地震は、三陸沖に大津波を引き起こし、震災による死者・行方不明者は1万8,000人を超えました。

阪神・淡路大震災の教訓を活かして、東日本大震災では18機のドクターヘリが現場に出動し、孤立した医療機関から160人以上を搬送するなど、救命・救助活動に当たりました。出動したヘリの数は当時全国に配備されていた26機の約70%にのぼります。一方で、都道府県を超えて出動するためのルールができておらず、また、現地での運航調整や指揮命令系統で課題が残りました。

こうした課題を解決するために、2013年11月に航空法施行規則第176条が改正され、2015年7月に防災基本計画が改定。2016年12月に厚生労働省が大規模災害時における指針を策定しました。

ドクターヘリ導入の効果

患者の搬送時間は救急車の3分の1~5分の1
ドクターヘリは地上150m(密集地300m)以上を時速200kmで航行するため、救急車(制限速度は一般道時速80km、高速道路時速100km)の3分の1~5分の1の時間で現場に到着することが可能です。また道路の渋滞や災害時の通行止めなどによる影響を受けることもなく、速やかに現場に向かうことができます。

救急医療は時間との闘いです。症状が重篤な人ほど1秒でも早い救命処置が必要であることを示す「カーラー救命曲線」によると、ケガで大量出血した場合、30分以内に救命処置を行えば救命率は50%ですが、1時間以上経つと0%になってしまうといわれます。つまり、救命処置までの時間を短縮できるドクターヘリは、救急医療においてたいへん重要な役割を果たす存在なのです。
救命率は3割向上。社会復帰できた人も増加
2003年に実施された厚生労働科学研究「ドクターヘリの実態と評価に関する研究」によると、ドクターヘリを運用している7つの基地病院に運ばれた患者は1,592人でした。その人たちがドクターヘリではなく救急車で運ばれたらどうなっていたのかを推測したグラフがあります。

両者を比較すると、ドクターヘリによる搬送は死亡者が27%、約3割減少し、社会復帰できる割合が45%増えたほか、後遺症や植物状態をそれぞれ減少させることができたと推定されました。
入院日数と医療費の削減にもつながる
HEM-Netは2008年、4つのドクターヘリ基地病院について、ドクターヘリと救急車搬送のいずれの可能性もあり得る地域で生じた交通事故の患者の入院日数と医療費を比較しました。

その結果、4カ所の基地病院すべてで、救急車よりもドクターヘリのほうが入院日数は4~18日短く、入院点数(診療報酬)も0.5万点~ 11万点(※)低いことが明らかになりました※。

また、先の7カ所の基地病院の調べでも、ドクターヘリを使ったときの医療費と、使わなかったと想定したときの医療費を比較したところ、医療費の削減にもつながることが分かりました。

※診療報酬は1点を10円として加算される。

課題

夜間運航
ドクターヘリは365日運航していますが、24時間体制ではありません。運航時間は原則、午前8時半から日没までです(基地病院によって異なる)。ヘリコプターは「有視界飛行」といって、パイロットが目視によって他の航空機や障害物を確認しながら飛行します。なので、雨天でも飛べますが、雲が低く視程が悪いときは飛べません。夜間であっても目視は可能ですが、日本では飛行の安全のために夜間は運航していません。一方、スイスでは夜間にも発生する患者のため365日24時間体制を実現させています。日本でも夜間運航が望まれますが、そのためにはヘリポート周辺の照明設備や暗視ゴーグルなどの関連装備の充実やパイロットの確保などが多くの課題を解決しなければなりません。
新車以外にもD-Call Netを拡大
交通事故が発生したときドクターヘリの起動に繋げるD-Call Net(救急自動通報システム)はすでに本格運用されていますが、このシステムは専用の機器が搭載してある新車を対象としており、専用の機器がついていない使用過程車(※)には対応していません。しかし、ドクターヘリは誰でも公平に受けられる無料の公共サービスですので、D-Call Netもすべての乗用車に対応することが望まれます。HEM-Netではその研究を始めています。

※使用過程車:登録が行われて使用されている車。新規登録者を含まない。
都道府県境を越えた広域運用
ドクターヘリは都道府県単位で運航されており、配備数は多くの県で1機のみです。したがって、ドクターヘリの出動中に出動要請が入ると対応ができません。機数を増やせば解決できますが、財政負担を考えると複数のドクターヘリを導入することは容易ではありません。現在、この重複要請に対応するため、隣県同士が協定を結んで助け合っているところもあります。

一方、地理的に、県内のある地域が隣県のドクターヘリ基地病院に近いといったことは多く見受けられます。そうした場合、最初から隣県のドクターヘリが出動できれば、救命率は大幅に向上します。このような、生活圏を重視した出動システムの構築も始まっています。ドクターヘリ特別措置法もドクターヘリ運航に当たって「都道府県の区域を超えた連携・協力体制の整備」を留意事項としています。

海外のドクターヘリ事情

ドクターヘリを最初に導入したのはスイスで、1952年のことです。ちなみに、医師が搭乗した飛行機(固定翼)による救急医療システムを世界で最初に始めたのはオーストラリアで、なんと1928年のことです。1970年代からドイツとアメリカがヘリコプター救急を開始し、その後、フランス、イギリス、オランダ、オーストリアなど多くの国で救急ヘリコプターの配備が進みました。
ヘリコプター救急体制の国際比較
アメリカドイツスイスフランス日本
開始時期1972年1970年1952年1983年2001年
事業主体カウンティ市・郡REGASAMU都道府県
運航者民間ヘリコプター会社ADAC、軍、
防災局、民間会社
REGA、民間会社民間会社民間会社
医療搭乗者FN×2、FN+PM医師+PM医師+PM医師+PM医師+FN
飛行範囲半径150~200km半径50km全国15分以内に到着可能範囲県単位(105県)都道府県単位
飛行条件昼夜間、計器飛行昼間昼夜間昼間昼間
運航費負担患者(医療保険)社会保険パトロン+寄付+医療保険+患者国+都道府県
注)FN:フライトナース、PM:パラメディック

関連コンテンツ

ドクターヘリとは 拠点 装備・設備 連携 歴史と実績 運営の仕組み