豊岡市の公立豊岡病院を拠点に県北部、京都府北部、鳥取県をカバーするドクターヘリは17日に就航する。本格的な運用を前に、ヘリに乗り込む医師や搭乗員らと、各地の消防機関や医療機関との間で訓練が続いている。ヘリと地上部隊との連携や無線の受信範囲を確かめるなど、課題を洗い出して本番に備える。
訓練は今月2日から始まった。7日までの10回の訓練は天候にも恵まれ、無事に終わったという。16日までに合計で県内9回、京都府内6回、鳥取県内5回の計20回の訓練がある。
新温泉町の山間部で3日に訓練があった。町内の駐車場で50歳ぐらいの男性が倒れて意識がないという通報があったとの想定で、美方広域消防本部が午後2時半過ぎにヘリの出動を要請。事前にヘリとのランデブーポイント(合流地点)として指定されている同町井土の河川公園には、居合わせた人を退避させるなど安全を確保し、発煙筒で風向きを示すなどしてヘリの着陸を助けるため、消防の支援隊が向かった。
ヘリは同48分に到着。山間部で道路事情が悪くてヘリの方が早く到着したり、症状によっては患者を動かせなかったりする場合を想定し、ヘリを降りた医師らは少しでも早く治療を始めるため、消防の車で患者が倒れている現場へ急行した。現場での応急処置を終えた後、午後3時過ぎに合流点で患者をヘリに乗せたところで訓練は終わった。
ヘリで豊岡病院に戻るのにはさらに約10分かかるが、救急車だと同病院まで約1時間かかるのに比べると大幅な短縮だ。同消防本部の田中音幸消防長は「たいへんありがたい。大いに活用して、助けられる命を少しでも増やしたい」と話した。
訓練後には、医師と救急隊員の間で意見交換もあった。消防隊員の「患者の容体の情報量はどれくらいあればいいのか」との質問に対し、医師は「現場に持ち込む医療機器を選択できるような情報を。既往症もわかればほしい」などと答えていた。
豊岡病院但馬救命救急センター長の小林誠人医師は「山間部ではヘリが着陸できる場所が限られており、車に乗り換えて現場に向かうことも十分ある。地域の実情にあった訓練ができた」と総括。天候次第で最寄りの合流地点にヘリが着陸できない場合もあるとして、「治療開始までの時間を短縮するためにも合流地点をさらに増やすことも検討してほしい」と助言していた。 (2010年4月8日 asahi.com)