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ドクターヘリ10年の歩みと展望【下】 <公明新聞>
2009.10.23

救命の仕組み 大きく前進 医師やスタッフの育成が急務   

川崎医療福祉大学 小濱啓次教授に聞く

 

--今年は、ドクターヘリの試行的事業開始から、ちょうど10年を迎えます。

小濱啓次・川崎医療福祉大学教授  2001年4月の本格運航に至るまで、なぜドクターヘリか、という理解を得るための説明や、騒音に関し、関連自治体などとの合意に時間を要しました。しかし、関係者の努力により、この試行的事業を含めて傷病者の総搬送は、3万人超(08年末)になりましたが、人身事故はなく運航されています。

 

--07年6月の「ドクターヘリ法」成立で、ヘリコプター救急の有用性と必要性への認識が格段に高まっています。

小濱 ドクターヘリで救護された人は、死亡率が地上救急より2割ほど減り、社会復帰は約2倍になります。この法律によって、均一に、より助かる仕組みができたことは大きいと思います。また救命や後遺症軽減、入院日数の短縮、医療費削減などの長所もあります。さらに搬送中に治療方針の指示を病院側に出すことで、治療スピードを格段に上げることができます。

 今、全都道府県へのドクターヘリの配備が進められていますが、こうした環境充実の陰に、公明党の努力があったことを明言しておきたい。

 

--今年3月から、これまで国と自治体で半分ずつ負担していた運営経費のうち、自治体負担分の半分が、特別交付金として国から出ることになり、全国普及へ弾みになりました。

小濱 一歩前進といえますが、08年度のヘリポート1カ所当たりの出動平均回数は、約390回に達しています。しかし、基準出動回数(240回)を超えると原則、運航会社の持ち出しになります。従って、運航費の負担を国がしっかりと支援していくことが求められます。

 

--消防防災ヘリとドクターヘリとの連携体制の構築や、運航時間の拡大なども課題となっています。

小濱 人の命を救う視点に立って連携を進めることが肝要です。より短時間で現場に到着でき、かつ、消防防災ヘリと同じ立場に位置づけられるよう航空法(施行規則第176条)改正が必要であると思います。また運航時間延長の一環としての夜間飛行は、照明付きヘリポート設置が不可欠で、その基盤設備を図らなければなりません。

 

--医師や看護師に加え、パイロットや整備士などの養成が全国導入へ欠かせません。

小濱 まずドクターヘリに乗るような救急医が少ないという現状があります。私は大学病院すべてに救命救急センターを設け、そこで救急医学講座を開設し、医者や卒後研究者、医学生をしっかり教育する。そしてすべての専門医も、救急医療を学んでもうらうようにすべきだと考えています。併せて、航空スタッフも長期的に育成していくことが求められます。

(2009年10月23日 公明新聞)