救命率向上、医師も負担減 ヘリポートの増設が喫緊の課題
今年でドクターヘリ誕生から10年。心臓発作や脳内出血、交通事故など一刻を争う緊急事態に、医師や看護師が搭乗して現場に駆け付け、多くの命を救ってきた。ドクターヘリ10年の現状と課題などを探ってみた。
「交通事故で男性が重傷」--。今年15日午前9時過ぎ、八戸市立市民病院・救命救急センターの今明秀所長は、一報を聞き、ドクターヘリが離陸の準備をしているヘリポートへ走った。ヘリポートと格納庫は病院の隣にあり、同センターから数十秒で直行できる。
事故現場に着くと、直ちにヘリの中で治療を開始。男性患者は肺を負傷し、同センターの集中治療室に搬送された。容体は安定、「うまく処置できた」と笑顔で語った。
青森県の南部地方に位置する同病院は、1997年に救命救急センターを設置。今年3月25日からドクターヘリ運航が始まった。
現在、同センターのヘリは県内全域をカバーし、出動は122件(15日現在)に及ぶ。患者は、けがと病気が「ほぼ五分五分」で、病気の半分くらいは脳卒中だ。特に過疎地に住んでる人などには有効で、心臓疾患で心肺停止の人が一命を取り留めた例も。「もしも、ヘリがなかったらあの患者は助からなかった」と振り返る。
今所長はドクターへりの利点として、迅速な治療による救命率の向上とともに、医療従事者の負担減を強調する。遠隔地のある病院ではこれまで、より高度な治療が必要な患者を救急車で同センターに運んでいたが、同乗する医師らは往復約6時間も拘束されていた。ヘリなら病院間搬送で片道35分。医師らは拘束されず、診療に専念できる。医師不足対策にも貢献して言えそうだ。
一方、課題も見えてきた。他の病院から依頼を受け、患者をヘリで迎えに行く場合、県内のほとんどの病院にはヘリポートがなく、ヘリが到着しても病院との距離があるため、患者の搬送に時間がかかる。救急医療は一刻を争う。ヘリポート設置は喫緊の課題だ。
また、ヘリの運航費については、総務省が今年3月、自治体負担の半分に特別交付税を充てるよう省令を改正。自治体の負担軽減により導入が増えると期待されている。
公明党は、阪神大震災での教訓などを踏まえ、いち早くドクターヘリ導入を推進。01年度予算案に、ドクターヘリの全国普及を盛り込むように要望し、ドクターヘリ事業は、01年度に5県でスタートした。
さらに視察活動や医師らとの意見交換などを精力的に展開。ドクターヘリの全国配備を推進する「ドクターヘリ法」の制定(07年6月)では終始、リード役を果たしている。
(2009年10月22日 公明新聞)