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ドクターヘリとは?
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いち早く救急現場へ

ドクターヘリとは、「医師をいち早く救急現場に連れていくヘリコプター」のこと。機内には初期治療に必要な医療機器や医薬品が装備・搭載してあり、基地病院の敷地内等で待機して出動要請に応えます。現場に到着後は、傷病者に対しフライトドクターが速やかに治療を行い、適切な医療機関へ搬送します。 早期に治療を開始できることが、患者を医療機関に搬送することを目的としている救急車と大きく異なります。ちなみに、ドクターヘリ(Doctor-Heli)は和製英語です。英語ではAir Ambulance、あるいはHEMS(Helicopter Emergency Medical Service)といいます。

ドクターヘリの役割

フライトドクターとフライトナースを現場に送り込む
119番通報が消防本部指令室に入ると、救急車を現場に出動させる一方、ドクターヘリの出動を基地病院に要請します。フライトドクターとフライトナースを乗せたドクターヘリがランデブーポイント(※)に着陸すると、フライトドクターとフライトナースは救急車に乗り込み、直ちに患者に治療を開始します。学校の校庭や公園、空き地などの狭い場所にも着陸するため、ドクターヘリは小型のヘリコプターが使用されています。

ドクターヘリはこうした「現場出動」のほかに、医療機関から別の医療機関へ患者を運ぶ「施設間搬送」も行っています。その多くは、より高度な医療を実施している医療機関に患者を搬送するためです。

※ランデブーポイント:救急車とドクターヘリが合流する場所(地点)。各道府県の運航調整委員会が事前に選定した「場外離着陸場」のこと。校庭や駐車場、公園などが選定されているが、2017年3月末時点のHEM-Net調査では一基地病院当たり625か所となっている。
医療の地域格差をなくす
ドクターヘリは救急医療のためのヘリコプターなので、出動に当たっては「緊急性」が重要な基準となります。しかし、地方では医療機関の集約が進み、その結果、身近なところに医療機関がなくなりつつあります。そうした医療過疎の住民にとって、たとえ「緊急性」が乏しくても遠く離れた医療機関に行くための手段が必要です。現実には、こうした「地域医療」のためにもドクターヘリは活用されています。また、その延長線上の問題として、山間や離島などのへき地に医師を派遣する「ドクターデリバリーヘリ」的な運用も検討すべき課題となっています。
大規模災害時に活動する
ドクターヘリは、大規模災害時での活動も重要な任務の一つです。大規模災害時には多数の傷病者が発生しますが、そうした傷病者は被災地外に短時間に広域に分散して搬送することが必要です。今や全国で53機を数えるドクターヘリは、自衛隊ヘリや警察ヘリ、消防防災ヘリ、海上保安ヘリ等と連携して活動することが求められています。そのような連携を的確に行うためには、出動に当たっても、また、被災地での活動に当たっても、一定のルールが必要です。政府は「防災基本計画」に必要な事項を記載するとともに、厚生労働省において「大規模災害時におけるドクターヘリの運用体制構築に係る指針」を策定しています。また、災害時にドクターヘリが自由に被災地に離着陸できるよう、航空法施行規則第176条は航空法の規制を排除する特例を規定しています。

ひと目でわかるドクターヘリ

年間出動件数
2022年度の実績。
救急車との入院日数比較
2001年10月1日~2007年12月31日までの間に、日本医科大学千葉北総病院にドクターヘリあるいは救急車で搬送された交通事故患者のケース。健康保険の費用(入院時の保険点数)は、ドクターヘリが132,595点、救急車が248,720点。
導入都道府県数と配備機数
47都道府県に57機
2024年2月現在。47都道府県には、ドクターヘリを運営している関西広域連合に属す京都府を含む。
運航時間
基地病院によって異なる。日本と違い、スイスは24時間運航体制。
1機当たりの年間運営費
運営費の内訳は、機体賃借料、パイロット等拘束料、燃料費、保守料、航空保険料など。総配備数53機の年間総額は132.5億円。国民1人当たりわずか105円(132.5億円÷1億2600万人)。
飛行時速
渋滞などに関係なく一直線に飛べるところも、ドクターヘリの強み。ちなみに、救急車の制限速度は一般道で時速80km、高速道路で時速100km。
出動1件当たりの費用
1機当たりの年間運営費2億5000万円÷1機当たりの平均年間出動件数548件。

いざ、出動!その流れとは?

ドクターヘリは私たちが直接、要請することはできません。119番通報を受けた消防本部指令室が、通報内容(キーワード)から、あるいは出動した救急隊の報告からドクターヘリ出動の必要性を判断し、基地病院に出動要請します。具体的な出動の流れは次の通りです。なお、ドクターヘリを利用しても搬送代を支払う必要はありませんが、治療にかかった費用は支払う必要があります。
119番通報から搬送までの流れ
①119番通報
傷病者を知らせる119番通報が入る。
②ドクターヘリ要請
消防本部指令室がドクターヘリの出動が必要と判断した場合、救急車を現場に向かわせると同時に、
基地病院にドクターヘリの出動を要請。
③救急車出動
現場に到着後、救急隊員が、救命処置を施す。
④救急隊員からドクターヘリの出動要請
119番通報と同時にドクターヘリの出動を要請しなくても、現場で傷病者を見た救急隊員がドクターヘリを
必要と判断した場合は、消防本部指令室に報告。消防本部指令室から、出動を要請。基地病院によっては、救急隊員が直接要請することもある。
⑤ドクターヘリ出動
フライトドクター、フライトナース、パイロット、整備士がドクターヘリに乗り込み、指定された現場近くの
ランデブーポイント(※1)に向かう。フライトドクターとフライトナースは、無線で伝えられる患者情報
(年齢、性別、状態、意識レベルなど)をもとに、初期治療の準備をする。
⑥ランデブーポイントに搬送
救急車は患者を乗せ、ランデブーポイントに搬送。
⑦救急車と合流
ランデブーポイントに到着したドクターヘリは、傷病者を乗せてきた救急車と合流。フライトドクターは救急車の中で迅速に(※2)初期治療を開始する。
⑧搬送
初期治療を行った後は傷病者をドクターヘリに乗せ、治療を行いながら状態にあった適切な医療機関に搬送する。

※1 ランデブーポイント:救急車とドクターヘリが合流する場所(地点)。各道府県の運航調整委員会が事前に選定した「場外離着陸場」のこと。校庭や駐車場、公園などが選定されているが、2017年3月末時点のHEM-Net調査では一基地病院当たり625か所となっている。
※2 世界におけるドクターヘリ事業のモデルとなったドイツの多くの州では、『出動要請から15分以内に初期治療を行う』よう定めている。


救急車との違い
救急車の場合は、患者を病院に搬送してくるまでは、医師は待つことしかできませんが、ドクターヘリの場合は医師が患者の元にいくため、いち早く治療を開始できることが大きなメリットです。
また、治療を行う医師と看護師を救急現場に派遣するために緊急走行できる緊急自動車を「ドクターカー」といいます。夜間や悪天候時に運航ができないドクターヘリと違い、夜間にも、悪天候時にも活動ができる点が優れています。
消防防災ヘリコプターとの違い
消防防災ヘリは、病院ではなく、航空隊の基地があるヘリポートで待機をしているため、医師を運ぶ場合は、病院まで迎えにいく時間がかかります。消防防災ヘリは消火活動や救急活動、救助活動等を任務としており、救急活動は消防防災ヘリの活動の一部に過ぎません。道県が保有するヘリコプターと東京消防庁や政令指定都市等の消防機関が保有するヘリコプターに区分されます。2018年11月1日現在、44都道府県に75機が配備されています。活動の性質上、消防防災ヘリは中型または大型のヘリコプターであるのに対し、ドクターヘリは小型です。

2017年中の出動状況を見ると、全体で6,752件の出動のうち、救急活動が3,370件、救助活動が2,028件、消火活動が1,110件、その他が244件となっており、救急活動が約50%を占めています。また、消防防災ヘリは救助隊員が人を吊り上げて救助するための「ホイスト」を装備しています。山岳遭難の場合は、消防防災ヘリがホイストで救助した傷病者をドクターヘリのフライトドクターが治療し、病院に搬送するという連係プレイが行われます。

ドクターヘリに関わる人たち

ドクターヘリに乗組員(クルー)として搭乗するのは、ヘリコプターを操縦するパイロット(機長)のほか、フライトドクター、フライトナース、そして整備士の4人。それを地上でサポートするのがCS(Communication Specialist)です。それぞれのスペシャリストが高い専門性を持って関わっているのが、ドクターヘリなのです。

フライトドクター
救急医療に精通し、ドクターヘリでの活動訓練を受けた医師で、ドクターヘリに乗り込みいち早く現場に向かい、傷病者に治療を行います。幅広い医療知識と技術、決断力が求められます。
フライトナース
フライトドクターとともにドクターヘリに乗り込み、看護師として現場でフライトドクターのサポートをしたり、家族に付き添ったり、さまざまな仕事を行います。現場で必要な医療資機材が入った救急バックの管理も行います。
パイロット(機長)
フライトドクターやフライトナースを乗せたヘリを操縦して現場に向かい、治療を施した患者を医療機関まで運びます。急な天候の変化に対応しながら、ドクターヘリを安全に運航するという責任の大きな仕事です。
整備士
ヘリが安全に飛行できるよう機体を保守点検するだけでなく、出動したときは現場の消防隊と無線で連絡をとりあい、ランデブーポイントに降りる手配をします。また、ドクターヘリのストレッチャーを操作するなどして、フライトドクターやフライトナースをサポートします。
CS(Communication Specialist)
「通信の専門家」を意味するCS(Communication Specialist)。ドクターヘリの出動コールを当日のクルーに伝えたあとは、消防本部指令室とやりとりをしてランデブーポイントを調整し、ドクターヘリの動きを見守る専用の管制官で、ドクターヘリの「扇の要」の役割を担います。

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