ドクターヘリは私たちが直接、要請することはできません。119番通報を受けた消防本部指令室が、通報内容(キーワード)から、あるいは出動した救急隊の報告からドクターヘリ出動の必要性を判断し、基地病院に出動要請します。具体的な出動の流れは次の通りです。なお、ドクターヘリを利用しても搬送代を支払う必要はありませんが、治療にかかった費用は支払う必要があります。
①119番通報
傷病者を知らせる119番通報が入る。
②ドクターヘリ要請
消防本部指令室がドクターヘリの出動が必要と判断した場合、救急車を現場に向かわせると同時に、
基地病院にドクターヘリの出動を要請。
③救急車出動
現場に到着後、救急隊員が、救命処置を施す。
④救急隊員からドクターヘリの出動要請
119番通報と同時にドクターヘリの出動を要請しなくても、現場で傷病者を見た救急隊員がドクターヘリを
必要と判断した場合は、消防本部指令室に報告。消防本部指令室から、出動を要請。基地病院によっては、救急隊員が直接要請することもある。
⑤ドクターヘリ出動
フライトドクター、フライトナース、パイロット、整備士がドクターヘリに乗り込み、指定された現場近くの
ランデブーポイント(※1)に向かう。フライトドクターとフライトナースは、無線で伝えられる患者情報
(年齢、性別、状態、意識レベルなど)をもとに、初期治療の準備をする。
⑥ランデブーポイントに搬送
救急車は患者を乗せ、ランデブーポイントに搬送。
⑦救急車と合流
ランデブーポイントに到着したドクターヘリは、傷病者を乗せてきた救急車と合流。フライトドクターは救急車の中で迅速に(※2)初期治療を開始する。
⑧搬送
初期治療を行った後は傷病者をドクターヘリに乗せ、治療を行いながら状態にあった適切な医療機関に搬送する。
※1 ランデブーポイント:救急車とドクターヘリが合流する場所(地点)。各道府県の運航調整委員会が事前に選定した「場外離着陸場」のこと。校庭や駐車場、公園などが選定されているが、2017年3月末時点のHEM-Net調査では一基地病院当たり625か所となっている。
※2 世界におけるドクターヘリ事業のモデルとなったドイツの多くの州では、『出動要請から15分以内に初期治療を行う』よう定めている。
救急車との違い
救急車の場合は、患者を病院に搬送してくるまでは、医師は待つことしかできませんが、ドクターヘリの場合は医師が患者の元にいくため、いち早く治療を開始できることが大きなメリットです。
また、治療を行う医師と看護師を救急現場に派遣するために緊急走行できる緊急自動車を「ドクターカー」といいます。夜間や悪天候時に運航ができないドクターヘリと違い、夜間にも、悪天候時にも活動ができる点が優れています。
消防防災ヘリコプターとの違い
消防防災ヘリは、病院ではなく、航空隊の基地があるヘリポートで待機をしているため、医師を運ぶ場合は、病院まで迎えにいく時間がかかります。消防防災ヘリは消火活動や救急活動、救助活動等を任務としており、救急活動は消防防災ヘリの活動の一部に過ぎません。道県が保有するヘリコプターと東京消防庁や政令指定都市等の消防機関が保有するヘリコプターに区分されます。2018年11月1日現在、44都道府県に75機が配備されています。活動の性質上、消防防災ヘリは中型または大型のヘリコプターであるのに対し、ドクターヘリは小型です。
2017年中の出動状況を見ると、全体で6,752件の出動のうち、救急活動が3,370件、救助活動が2,028件、消火活動が1,110件、その他が244件となっており、救急活動が約50%を占めています。また、消防防災ヘリは救助隊員が人を吊り上げて救助するための「ホイスト」を装備しています。山岳遭難の場合は、消防防災ヘリがホイストで救助した傷病者をドクターヘリのフライトドクターが治療し、病院に搬送するという連係プレイが行われます。