【函館】医師と看護師が乗り込み救急現場に駆けつける「道南ドクターヘリ」の運航開始を2月16日に控え、函館市消防本部は27日、実際に使う新型ヘリコプターを用いた初の訓練を2日間の日程で始めた。救急病院まで時間のかかる遠隔地が多く、離島もある道南では、迅速な患者搬送が可能になることから救命率向上につながると期待されている。
初日の訓練では、医師らを乗せた真新しいヘリが、患者役の男性を南茅部運動広場(函館市川汲町)から約20キロ離れた市内中心部の凌雲中グラウンド(同市千代台町)に約10分で搬送。待機した救急隊員らが男性を救急車に担架で運び入れ、搬送の流れを確認した。
搬送する患者の容体や地上の気温、風速などについての無線通信や、救急隊員による機体誘導が円滑にできるか―などがポイント。市消防本部東消防署的場救急隊の鳥居秀幸隊長(56)は「南茅部から救急車だと40分ほどかかる距離だが、ヘリで運べば患者への負担が大きく減る」と語った。
道南18市町と医療機関でつくる道南ドクターヘリ運航調整委員会が導入した機体は全長13メートル、幅3・3メートルの7人乗り。医師と看護師のほかに最大で2人の患者を収容可能だ。基幹病院となる市立函館病院まで最も遠い奥尻町国保病院は現在、救急車とフェリーで3時間40分かかるが、ヘリだと30分程度で搬送できる。
ドクターヘリは、通報を受けた道南の7消防本部が市立函館病院内の運航管理室に出動を要請。ヘリは函館空港から、患者を乗せた救急車が待つ着陸地点「ランデブーポイント」を目指す。患者が重篤な場合は市立函館病院、緊急性が低い場合は、函館市内10カ所の2次医療機関に運び込む。
同ポイントは渡島、檜山両管内で計286カ所設置する予定。運航調整委は年360回程度の出動を想定し、運航費用は年約2億8860万円と試算。国と道からの補助金計約2億円などを充てても、約6千万円の赤字になる見込みだ。赤字分は道南の全市町が利用状況などに応じて、200~1800万円程度を分担する。ある自治体の担当者は「高齢化で搬送回数の増加も予想され、負担増も覚悟している」と話す。(鈴木孝典)
(2015年1月28日)