■導入1年 出動289回・現場到着平均14分■
【伊東大治】県の医療救急ヘリコプター「ドクターヘリ」の導入から1年が過ぎた。消防からの出動要請は平均すると1日1回。医師の応急処置を受け た患者の7割が回復し、退院できたという。福島県など隣県との広域連携も進む。一方、冬場にヘリが離着陸できるランデブーポイントの確保が課題となってい る。
■冬場の離着陸ポイント課題■
2日、山形市内で開かれた県ドクターヘリ運航調整委員会。消防機関や医療機関の代表を前に、県健康福祉部の大泉享子部長は「ドクターヘリが順調に運用されていると認識している」と述べた。
ドクターヘリは山形市の県立中央病院に常駐する。
県によると、ヘリの運航が昨年11月15日に始まって以来、この1年で消防機関から345回の出動要請があり、289回出動した。平均14分で現 場に到着。245人の患者が搭乗医師や看護師の応急手当てを受け、最寄りの病院へ搬送された。冬の悪天候や出動要請が重なり、出動できなかったのは約6回 に1回(56回)という。
救命救急は1分1秒を争う。ドクターヘリの運航実績を全国平均と比較=表=すると、ヘリが現場に到着するまでの時間は25分で、5分ほど早い。消防や医療機関などが地域ごとに3カ月に1度、ドクターヘリの搬送事例を検討する会を開いており、連携の成果が現れた。
ただ、病院のヘリポート整備や、冬場でもヘリが離着陸できるランデブーポイントの確保は予算面からなかなか進んでいない。例えば、最上地域では拠 点病院の県立新庄病院にヘリポートがない。冬季以外は車で5分の場所にヘリが離着陸できるが、冬季は20分離れた市民スキー場しか使えない状態だ。冬場、 ランデブーポイントとして使うためには除雪が欠かせず、県内に約750カ所ある同ポイントのうち冬でも使えるのは94カ所だけだ。
真室川町では今年1月、1100万円をかけて除雪や融雪が可能な専用へリポートを旧小又小学校に整備、戸沢村も8月、約200万円をかけて冬でも 使えるヘリポートを確保した。が、すべて整備は自前。ドクターヘリの基地になっている県立中央病院の森野一真・県立救命救急センター副所長は「整備を進め るために、国や県の支援が必要だ」と指摘する。
■離島・飛島も30分圏内に 秋田とも応援協定締結へ■
ドクターヘリの活動範囲は離陸から30分内で急行できる半径100キロ圏。山形県は今年、ドクターヘリを持つ隣県の福島、新潟と応援協定を結んでおり、広い県域をカバーしあう。
さらに同様の協定を秋田県と年内にも結ぶ予定だ。実現すれば、山形から45分かかる酒田市の離島・飛島が、秋田市から30分の活動圏内になる。
県境を越えた連携を実効性のあるものにするため、この2日には山形のヘリが新潟県村上市へ、3日には新潟のヘリが鶴岡市へ駆けつけて実地訓練が行われた。
(2013年12月5日朝日新聞)