認定NPO法人
救急ヘリ病院ネットワーク
HEM-Net

スペシャルコンテンツ
救われた命
VOL.4
バイクで転倒後に車と衝突。ドクターヘリで奇跡の救命
(多発肋骨骨折、肺挫傷、血胸など)
松崎深雪(まつざき みゆき)さん
(長野県上伊那郡在住 取材当時25歳)

ドクターヘリ出動要請で少なくないのが交通事故。松崎深雪さん(写真右)はバイクの転倒後に自動車と衝突、肋骨が何本も折れる大けがをしましたが、ドクターヘリによって命が助かりました。事故後に結婚した夫、將陽さん(写真左)との間にはお子さんも生まれ、幸せな日々を送っています。(2014年10月発行の『HEM-Netグラフ』33号の記事を再編)
2020.4.1
肋骨が何本も折れ、呼吸が困難な状況
2012年10月21日。深雪さんは友人と、長野県から山梨県の富士五湖に250㏄のバイクでツーリングに来ていました。

「バイクの免許を取得して1年足らず。周囲の心配をよそに、バイクに乗るのが面白くて仕方がない時期でしたね」と深雪さん。そんな矢先に起こったバイク事故でした。

深雪さんには記憶はありませんが、先に走る友人の後を追って本栖湖に沿った片側一車線の急な右カーブに差し掛かった際、曲がり切れずに転倒し、対向車と衝突したようでした。

深雪さんを搬送した山梨県立中央病院救命救急センターの担当医師によると、現場で治療を開始したときには深雪さんの意識はもうろうとしており、肋骨が何本も折れ、胸がぐらぐらと揺れて呼吸も困難な状況だったそうです。

「超音波検査では胸部や腹部の出血も確認されました。重篤な多発外傷でした」(担当医師)

ドクターヘリ搬送の経緯
2012年10月21日
14:11 消防覚知
14:24 救急隊現着
14:36 ドクターヘリ出動要請
14:40 ドクターヘリ出動
14:50 現地(本栖湖青少年センター)着陸
15:08 現地離陸
15:17 山梨県立中央病院離陸
ヘリ搬送で20分後には救命救急センターに
現場で胸部を固定し、点滴をしながらヘリで搬送。病院に到着した20分後には救命救急センターの初療室で、救命救急科の医師が総がかりで深雪さんの手術を行いました。多発肋骨骨折、肺挫傷、血胸のほか、脾臓(ひぞう)や肝臓の損傷、外傷性くも膜下出血、頸椎(けいつい)、胸椎、脛腓骨(けいひこつ)の骨折などもあり、一刻を争う状況でした。

手術は無事に終わりICU(集中治療室)に移ったものの、深雪さんの呼吸はなかなか安定しません。一般病棟に移ったのは、事故から1カ月経った11月16日でした。

「厳しい状況」も回復の兆し。職場復帰も
深雪さんが事故に遭った本栖湖付近には、2つの病院がありますが、いずれも二次救急の病院で、重篤な外傷には対応できません。消防は県内唯一の救命救急センターである県立中央病院への緊急搬送を決断し、直ちにドクターヘリを要請しました。

この決断により、深雪さんの命は助かりました。 事故後に病院に駆けつけた家族や当時交際中だった夫の將陽さんは、「医師からは非常に厳しい状況を告げられた」と打ち明けます。

それでも少しずつ回復し、歩けるようになった深雪さんは、12月3日に自宅近くの病院に転院します。そのときもまだ脊椎骨折のためコルセットで固定しても痛みが残っていましたが、少しずつ生活を取り戻し、翌年1月19日に退院。その半年後、6月20日にようやく職場復帰しました。

退院から1年余り。2014年4月に、深雪さんは職場の先輩の將陽さんと結婚しました。現在でもまだ、首や肩に痛みは残っているといいますが、職場の理解もあって、15時までの短時間勤務で仕事を続けています。