HEM-Netは27日(土)全国町村議員会館2階大会議室でHEM-Net創立10周年記念シンポジウム「ヘリコプター救急新時代」を開催、関係者ら約170名が出席した。これはHEM-Netの創立10周年を記念して、これまでのドクターヘリ導入の進歩状況および消防防災ヘリの救急活動を総括し、今後のヘリコプター救急体制の整備のあり方を討議するため、「ドクターヘリ特別措置法」の公布日である6月27日を開催日に選びシンポジウムを開催したもの。
来賓挨拶を行った木村仁・参議院議員(ドクターヘリ推進議員連盟事務局長)は挨拶の中で、「助成金交付事業を法人」としてHEM-Netが登録第1号として認可されたことを明らかにした。このあと作家の柳田邦男氏が「いのちを守る社会を創る」と題して基調講演、篠田伸夫・HEM-Net副理事長を司令に、厚生労働省の三浦公嗣・医政局指導課長ら5氏によるパネルディスカッションが開かれ活発な質疑応答が繰り広げられた。主な内容は次のとおり。
▽國松理事長開会の辞=HEM-Netは1999年12月にNPO法人の認証を受け発足したが、わが国ヘリコプター救急10年の歩みを振り返ってみると、昨年6月国がドクターヘリの枠組みを明確に示したことで転機が訪れた。立法のあと順調に進み、TV「コートブルー」は高視聴率を示した。本日はどうか意義のあるシンポジウムになるよう願います。
▽挨拶:木村仁・ドクターヘリ推進議員連盟事務局長・参議院議員=HEM-Net創立10周年記念シンポジウム「ヘリコプター救急新時代」の開催を心からお喜びいたします。特別措置法立法の過程においてHEM-Netの果たした役割は非常に大きいものがあったと敬意を表します。私は救命救急士の制度に次いでドクターヘリの議員立法は大変難航しましたが、野党を含めたすべての党の賛成を得て委員長提案により衆・参両院の本会議で成立した。これによってドクターヘリの全国配置を明確にし、地元負担の軽減につとめおそらく7割位の補助になるのではないか。人の命を救うドクターヘリを早く全国に配備し地域により格差がないようにしたい。
▽基調講演「いのちを守る社会を創る。~確かな一歩が、次なるステップへ~」作家:柳田邦男氏=(ドクターヘリに救われた農家の人の例を紹介)救急車がかけつけてきたが現場で強く強烈な痛みがあり、消防の方が「ドクターヘリを呼べ」と大声で叫びドクターヘリで搬送されたが、4日間目にようやく意識が戻り、後遺症も残らなかったエピソードを披露。続いてフライトナースの活躍ぶりや、補助事業でなく民間による救命救急ヘリ、福岡和白病院を紹介。同院の冨岡譲二・高度救命医療センター長によると、20年6月27日から1年間
の出動件数は144件にのぼった。冨岡氏は「Drヘリと競合するのではなく、離島での患者搬送などニーズは広い」と語った。
▽パネルディスカッション=パネリスト(発言順)三浦公嗣・厚生労働省医政局指導課長、開出英之・総務省消防庁救急企画室長、坂田久美子・愛知県医科大学病院高度救命救急センター看護師主任、宮坂勝之・長野県立こども病院院長、益子邦洋・日本医科大学千葉北総合病院救命救急センター長。司会の篠田伸夫・HEM-Net副理事長は、パネルディスカッションのテーマとして、(1)ドクターヘリの全国配備をどのようにして進めるか?(2)先進国ドイツのように15分ルールを日本に確立したい、などを挙げた。
会場から、質問1.ドクターヘリだけではへき地はカバーできないのでは。固定翼の活用をすすめたいと外国の例を挙げた。これに対して、三浦厚労相指導課長は「医療には地域性が反映してくる。財政規模もある医療計画を含めて都道府県が計画をたてており単純に外国との比較は困難。もう一つ固定翼による搬送も基本的には否定しない。北海道は札幌に旭川、釧路と3機体が決まり、様々な要件があり可能な限り国は助成していきたい」と答えた。次の質問「地域格差をなくすには、全国47都道府県に1機ずつ配備しないのか」に対しては、三浦課長は「私たち1県1機配備してもらいたいが都道府県が計画をたてるもので、来年度は各県で真剣に(導入を)検討して欲しい」。益子教授は「国が何をしてくれるかではなく、自治体がやる気がないと(ドクターヘリ整備が)進まない」とそれぞれ語った。
次にヘリ運航担当者から「ドクターヘリの機材費が2年間に5倍増えた。我々は命を救うという使命感を持って運航面で貢献しているが、パイロット、整備士の数も不足しており、CSを含めてクルーの養成をお願いしたい」。クルーの確保、医師の確保が今後問題となりそうだ。
あと、地方交付税の存続、国民の健康保険適用、問題高速道路への着陸、救急看護師の役割、搬送手段の検証などで質問があり、それぞれ担当者が回答した。
高速道路へのドクターヘリ着陸については、関係省庁間で協議している(三浦課長)が、昨年度に高速道路への着陸が1件もなかったことで、柳田邦男氏は「障害を取り除いて降りれるように取り組むべきだ」と発言した。最後に小濱啓次・HEM-Net副理事長(日本航空医療学会理事長)が閉会の辞を述べ、シンポジウムは終了した。 (日刊航空通信 2009年6月30日 佐藤)