県は来年度、ドクターヘリの導入に向けた検討を始める。現在は県所有の消防防災ヘリ「りょうま」が長距離救急搬送を担っているが、救急に特化したドクターヘリの導入により、搬送時間の短縮と早期の専門的な治療への着手などが期待できる。年度初めに医療関係者らによる検討委員会を発足させ、1年以内には導入の可否を含めた結論を出す。
りょうまは県消防防災航空隊が運航し、高知空港(南国市)に常駐している。県によると、東西に長い地形や高速道路網の未発達により、りょうまの救急出動件数(07年)は東京消防庁(360件)に次ぐ237件で全国トップクラス。広域救急の柱として年々出動件数は増加するが、2カ月程度かかる点検中は運航できない上に救急専用でないため、ドクターヘリの導入が浮上してきた。現在、全国15道府県で16機運航している。
りょうまでは、出動後、ほとんどのケースで高知医療センター(高知市池)の屋上で医師を乗せ、現場へ向かう。出動からの時間は、宿毛市の幡多けんみん病院27分▽四万十町(旧大正町)22分▽室戸市19分--などと、県内をほぼ30分でカバーできるが、ドクターヘリなら出動までの手間が省けることから、それぞれ約10分の短縮が可能。さらに、専用の医療機器の搭載などにより治療の早期開始ができるメリットがある。一般的に後遺症を残さないためには、外傷は1時間以内、脳卒中は2時間以内で専門的な治療を着手する必要があるとされている。
検討委員会では、四国他県との連携を視野に入れ、基地病院の設定やりょうまとの役割分担などを考えていく。また、導入の場合は基地病院が県と国の補助(約1億7000万円)を受け、ヘリ運航は病院が民間会社に委託する形になる。点検期間中も代替機での運航が可能という。
県医療薬務課は「りょうまでも搬送時間の短縮は実現しているが、さらに救命率などを上げるため、必要な課題に対してきちんと検討を進めていきたい」と話している。【服部陽】