認定NPO法人
救急ヘリ病院ネットワーク
HEM-Net

ニュース&アーカイブ
ニュース
  • TOP
  • ニュース&アーカイブ
  • 組織間運用の態勢構築を/導入進むドクターヘリ/  東北再生あすへの針路<河北新報>
組織間運用の態勢構築を/導入進むドクターヘリ/  東北再生あすへの針路<河北新報>
2015.01.13

 東日本大震災では都道府県所有のドクターヘリコプターが被災地に集結し、救援活動を展開した。災害時の有用性が実証されたのを受け、全国の自治体への配備は震災後の4年間だけで26機から43機に増えた。組織の壁を越えて運用するシステム構築が今後の課題として浮上している。

<通信回線断絶>
 震災では、花巻空港(花巻市)と福島県立医大病院(福島市)がドクターヘリの運用拠点になった。全国各地から16機が駆け付け、患者や災害派遣医療チーム(DMAT)の搬送に当たった。
 福島県立医大病院には9機が集結した。しかし、ドクターヘリ司令室と、県内の各消防本部を結ぶ通信回線が断絶するトラブルに見舞われた。ヘリ派遣の判断は、被災現場からDMAT隊員が衛星通信電話で伝える情報に頼らざるを得なかった。
 福島県立医大の田勢長一郎教授(救急医学)は「消防との通信ルートが確保されていれば、もっと多くの人を助けることができたのではないか」と振り返り「非常時でも自衛隊や消防と連携できる態勢づくりや日常の訓練が必要だ」と語る。

<隣県乗り入れ>
 東北では震災後、4機が新たに導入され、5県6機態勢になった。宮城県も2016年度中の配備を目指す。
 これに伴って平時の広域運用も増加している。13年には青森、岩手、秋田の北東北3県、山形、福島に新潟を加えた3県が、それぞれドクターヘリの相互乗り入れを始めた。
 泉田裕彦新潟県知事は「面積が広い県の場合、自県ヘリでカバーが難しいエリアもある。隣県との連携が欠かせない」と強調する。

<一元管理図る>
 今後発生が予想される首都直下地震では、自衛隊、消防など400機を超えるヘリが首都圏上空を飛び交うという試算もある。ドクターヘリも含めた災害対応ヘリの安全で効率的な運航が課題だ。
 民間気象予報会社のウェザーニューズは、持ち運びできる運航管理機器を開発。気象変化や他機の運航状況も機体と地上で即時に情報共有できるようになった。
 宇宙航空研究開発機構は、災害発生時におけるヘリ運航の一元管理を目指して実証実験を続けている。小林啓二研究員は「各ヘリの航路や任務を情報共有できれば、安全かつ効率的な救助活動が可能になる」と意義を強調した。

◎指揮系統を明確に/救急ヘリ病院ネットワーク・西川渉理事

 認定NPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」(東京)の西川渉理事に、災害発生時に効率よくドクターヘリを運用するために必要な方策を聞いた。

 東日本大震災ではドクターヘリが人命救助で活躍した半面、指揮命令系統の不明確さが浮き彫りになった。
 国の防災基本計画はドクターヘリの積極的な利活用を想定していない。DMATの支援にとどまっているのが実情だ。もっと積極的に各都道府県の災害対策本部にドクターヘリの運航関係者が参加できるようにしなければならない。
 それぞれのヘリが所属する機関で運航管理システムや無線周波数が異なっているのも問題だ。いざというとき、情報共有の壁になる。災害発生時に全国から集まった各種ヘリを統合して指揮する法整備が求められる。

◎河北新報社提言

【安全安心のまちづくり】
(1)高台移住の促進・定着
(2)地域の医療を担う人材育成
(3)新たな「共助」の仕組みづくり

 【新しい産業システムの創生】
(4)世界に誇る三陸の水産業振興
(5)仙台平野の先進的な農業再生
(6)地域に密着した再生可能エネルギー戦略
(7)世界に先駆けた減災産業の集積
(8)地域再生ビジターズ産業の創出

 【東北の連帯】
(9)自立的復興へ東北再生共同体を創設
(10)東北共同復興債による資金調達
(11)交通・物流ネットワークの強化

(2015年1月12日 河北新報)