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ドクターヘリ高まる期待<読売新聞>
2014.09.26

 

  来春、奈良県栗東市の済生会県病院に、県内全域と京都府南部をカバーするドクターヘリが配備される。搬送時間が短くなり、ヘリ内から医師の初期診療が受けられるため、重症患者の救命率向上などが期待される。今夏にヘリポートを整備した滋賀医大病院(大津市瀬田月輪町)では治療への効果を改めて確認しており、県内で救急医療体制の再編が進みそうだ。(生田ちひろ)
 
 国内のドクターヘリは2001年、岡山県倉敷市の川崎医大病院などで初めて就航。現在は36道府県で43機が活躍しており、今年4月には搬送が全国で通算10万回を超えた。1機あたり年2億円の維持費がかかるが、主に道府県が負担して救急医療の中核病院などに配備している。
 
 県内では、大阪大病院(大阪府吹田市)に大阪府が管理するヘリを依頼しているが、治療効果が分かれる到着までの飛行時間でみると、県北部では30分を超える場所もあった。
 
 関西広域連合は12年、共同運行するヘリを計4台から16年度までに6台に増やし、うち1台を県全域と京都府南部に充てる計画を策定。昨年11月には、済生会県病院を拠点にすることが決まった。
 
 新しい配置によって対象全域が30分以内で到着可能になり、年間120件以上の出動を見込む。県内の搬送先は滋賀医大病院(大津市)、長浜赤十字病院(長浜市)、近江八幡市立総合医療センターなど11病院で、京都府内は京都大病院など17病院とし、計28病院。費用は、搬送数に応じて県と府が分担する。
 
 県健康医療課は「極めて重要な輸送手段であり、県内での配備は意義深い」と強調する。
 
 
 
 広域連合の計画を受け、滋賀医大病院は今年6月、集中治療室(ICU)や手術室が入る病棟の隣にヘリポートを整備。大阪府のヘリを使い、乳幼児の移植や重症患者を含め4件の受け入れと1件の転院に利用した。最もヘリが効果を発揮したのが、急性肺塞栓症を発症した女性(52)のケースだった。
 
 滋賀医大病院によると、女性は8月13日午後3時頃、長浜赤十字病院に脳梗塞の治療で入院していたが、リハビリ中に突然、呼吸困難を起こした。CT(コンピューター断層撮影)などで、肺や肺動脈、全身の血液が流れ込む右心房に血の塊を確認すると、大阪府のヘリで医大病院まで約15分で搬送。発症から約1時間40分後に緊急手術が始まり、一命を取り留めた。一刻を争う場合には家族の同意を得る手続きなどを省いて手術する運用も奏功したという。
 
 滋賀医大病院の松末吉隆院長は「ヘリによって県北部の急患にも対応できるようになる」と自信を示した。
 
 搬送先の県内11病院はすでに常設のヘリポートを完備。また高島市は、救急車からヘリに患者を受け渡す臨時のヘリポート「ランデブーポイント」を3か所増やして22か所にした。市消防本部は「ヘリの恩恵を最も受ける地域になる」と期待を込める。
 (読売新聞2014年9月26日)