昨年12月26日に県内でドクターヘリの本格運用が始まって1か月が過ぎた。25日までの出動要請は53件で実際の出動は35件。119番から出動要請までの時間は平均約8分で、全国平均(約14分)より早く、県が導入した「キーワード方式」の効果とみられる。一方で、患者を引き継ぐ離着陸地点への救急車の到着がヘリより遅いという新たな課題も見えてきた。
キーワード方式は、119番の内容に「倒れている」「息ができない」など、重大事案を示唆する言葉が一つでも含まれていた場合、消防がすぐにヘリの出動要請を行うシステム。救急隊が現場到着後にヘリを要請するより時間の短縮を図ることができる。
ヘリの基地病院である鹿児島市立病院の吉原秀明・救命救急センター長によると、病院間搬送を除く23日までの出動25件のうち17件でキーワード方式が活用され、「迅速な医療活動ができている」と評価する。
8日に指宿市で行われた菜の花マラソンでは、走っている途中で倒れた60歳代男性に対し、約20分後に治療を開始することができた。
一方で、キーワード方式による要請のほとんどで、離着陸地点(ランデブーポイント=RP)にはヘリが先着した。救急車がヘリの11分後に到着したケースもあり、治療着手までに時間がかかっているという。
対策としては、現在646地点のRPの見直しなどが必要と考えられ、県保健医療福祉課は「事故はどこで起きるか分からない。RPが多ければ迅速な治療につながる。今後も新たなRPの確保に努めていく」としている。
吉原医師は「まずはキーワード方式による迅速な要請を浸透、定着させることが大切。1分1秒でも短縮するために、消防と検証を重ねていきたい」と話している。 (2012年1月28日読売新聞)