高い費用負担のために、全国的な導入は進んでいない。このほど、こうした壁を取り払うような税制措置などが取られ、導入への追い風になるか注目されている。
医師が大空から患者の待つ現場に急行するドクターヘリ。
千葉・木更津市にある君津中央病院は1月、千葉県で2機目となるドクターヘリを導入したばかり。
君津中央病院の三田一貴看護師は、看護師として15年のキャリアを見込まれ、フライトナースになった。
三田看護師は「(今までは)病院の中で処置をするということを主にやってたんですけど。今回、外に出てというので不安もありますけど」と話した。
ホットラインで「バイクの事故で、25歳の男性で、5メートルぐらい飛ばされているということです」と要請が入った。
速やかに準備を整え出動し、要請から3分でドクターヘリは離陸した。
三田看護師は、慣れない狭い機内でも、そつなく点滴などを準備する。
そして、出動要請からわずか13分で診断が開始された。
現場では、男性が頭部など全身を強打しており、脳内出血の可能性もあるという。
医師が「大丈夫?」と尋ねると、男性は「いや…、駄目です」と答え、ヘリ内に緊張が走った。
男性は、現場から近い鴨川市の亀田総合病院へ、わずか10分で搬送された。
しかし、患者の容体は予断を許さない。
三田看護師は「やるべきことはやったというとこなんで、(千葉)県全域を15分以内でですね、カバーできるようなヘリのシステムができれば、多くの方たちの命を救えるんじゃないかなと思います」と語った。
大空をかけるドクターヘリだが、いまだ導入は、全国で18機にとどまっている。
普及の大きなあしかせとなっているのが、1機あたり年間1億7,000万円という高い運営費。
国は、ドクターヘリを導入した地方自治体に対し、年間運営費の半分にあたる8,500万円を補助している。
しかし、この補助は最初の1機だけで、千葉県のような2機目の導入は、地方自治体の全額負担になる。
全国にドクターヘリを普及させるNPO法人「救急ヘリ病院ネットワーク」の篠田伸夫副理事長は、「地方が負担しなくちゃいけないというのは、結局、税金で8,500万を賄うわけです。その税金を生む税源がないわけですよね、十分。だからやっぱり、それがもうネックにならざるを得ない」と話した。
ドクターヘリの問題として、コストが必ず挙げられてきた。
国はこうした事態に、2009年度から2機目以降の運営費を折半することになった。
また、自治体の負担分およそ8,500万円の半分を特別交付税で財政支援する制度も3月からスタートした。
これにより、実質的に4分の1にまで負担が軽減されることになる。
救急ヘリ病院ネットワークの篠田副理事長は、「まず、地方が負担する部分の2分の1を特別交付税で面倒見ましょうというのは、これは極めて画期的ですね。これをきっかけに、たぶん僕は、どっと導入が進むだろうと思います」と語った。
君津中央病院のフライトナース・三田さんらにドクターヘリで搬送された男性を2カ月後訪ねると、2度の手術を乗り越え、奇跡的に回復に向かっていた。
男性の母親は「ドクターヘリのおかげで、この子の命が今ここにあるということで、本当に感謝してる」と話した。
(2009年4月11日 フジニュースネットワーク 要約)