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ドクターヘリ推進議員連盟中間とりまとめ
2009.09.07

ドクターヘリ推進議員連盟中間とりまとめ

 ドクターヘリ推進議員連盟は2008年11月20日、超党派の国会議員140名によって発足、6回の勉強会を重ねて、去る7月7日、ドクターヘリの全国配備の推進のために改善すべき課題について、以下のような中間とりまとめを発表した。

 同議員連盟は、その設立総会において、(1)ドクターヘリ導入促進事業の実施に必要な予算を確実に確保すること。(2)ドクターヘリの導入に関する地方交付税措置を充実すること。の2点を決議したが、この決議を受けて平成20年度から地方自治体のドクターヘリ経費負担を半減するための「特別交付税に関する省令」の改正、平成21年度予算としてドクターヘリ24機分を確保、22年度予算概算要求において出動回数の増加に伴う補助基準額の見直しなどの措置が取られたところであり、ドクターヘリの全国配備の推進のために大きな成果をあげてきた。

 中間とりまとめの本文および参考資料は以下のとおりである。

※  ※  ※

  

救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)の全国的配備の推進に向けて 中間とりまとめ

                                                     平成21年7月7日

                                                ドクターヘリ推進議員連盟

                                                      会長 丹羽 雄哉

 我々ドクターヘリ推進議員連盟は、昨年11月に発足してから、ドクターヘリの全国的配備の推進を目指し、救急現場の医師、ヘリコプター運航事業者、医師会、ドクターヘリ事業団体等の幅広い関係者から意見聴取を行ってきた。

 今般、ドクターヘリの全国的配備(注1)の推進のために改善すべき課題について以下のような中間的なとりまとめを行った。

 この中間とりまとめにより、ドクターヘリの全国的配備を推進するにあたり、必要な支援・施策等を行うべく、国等に対して強く要望し、提言することとした。

 今後、これらの課題を改善するため、厚生労働省をはじめ関係省庁は相互に連携し、各都道府県に対してより一層の支援を検討するとともに、医療機関、運航事業者等も含めた関係者が一丸となり様々な障害を排除し、できるだけ早期にドクターヘリの全国配備を実現できるよう、必要な体制整備を図るとともに、配備したドクターヘリの最も効率的な運用について、必要な対策を講ずるべきである。

注1)平成21年6月1日現在、16道府県18機が配備(平成21年度予算計上、24機分を計上)

(1)ドクターヘリの導入促進について

   ヘリコプターを活用した救急医療の確保においては、既に利用されている消防・防災ヘリ、自衛隊ヘリ、海上保安庁ヘリ等の活用方法を工夫し促進することで、ある程度の効果が期待できるが、各々の特徴を活かす意味では、地域の実情を考慮しつつ、ドクターヘリを導入した上で役割分担又は連携を図ることが重要である。

 また、ドクターヘリの運航範囲を考えると、広域であったり、東西南北に長い都道府県のほか、離島を抱える場合は、地域の実情に合わせて2機目の導入に向けて積極的に検討するべきである。

  このように地域の救急医療体制を総合的に確保するためにも、ドクターヘリの全国的配備を目指し、ドクターヘリの導入促進について、都道府県等関係機関に強く働きかけるとともに、国は必要な支援や施策を行うべきである。

(2)財政措置の強化について

  ドクターヘリの安定的な運航を確保するためには、適正な経費の確保が必要になる。

  ドクターヘリの運行回数については、補助基準額設定時と比較して、現在約2倍に増加(注2)している、このように運行回数の増加等に応じた変動費を中心に補助対象総額(注3)の見直しについて、検討を行うべきである。

  また、平成20年度から、特別交付税により、自治体負担分の半分が措置されることになったが、国はこの特別交付税措置をより充実させるよう検討するとともに、ドクターヘリの着陸拠点の設置の増加など、自治体が整備する場合の財政上の配盧についても、あわせて検討するべきである。

注2)補助基準額設定時の飛行回数は240回、2007年度出動回数は472回。

注3)平成21年度補助対象総額:167,840千円/1ヵ所(ヘリ関係費用のみ:152,250千円/1ヵ所)

(3)安全な運航の確保について

  ドクターヘリが導入されて以来、幸いにして重大な事故が一度も起こっていないのは、熟練したパイロット、整備士、通信士等の確保やこれら従事者に対する絶え間ない修練によるところが大きいことから、今後ともパイロットや整備士等の資質の向上に努めていくべきである。

 なお、ドクターヘリを安全に運航するためには、特に離着陸に際し、必要な知識、技能等を有するパイロット等を確保する必要があり、その評価としての認定制度の必要性について検討するべきである。

(4)人材の育成・確保について

  ドクターヘリにおける救急医療の特殊性という面を考慮すると、医療従事者の研修は重要である。

  今後、ドクターヘリの全国的配備を推進していく上で、ドクターヘリに搭乗する医療従事者等の定期的な研修やさらなる養成が必要となるので、フライトドクターやフライトナースの育成・確保について、必要な支援の検討を行うべきである。

 また、今回助成金交付事業を行う法人として登録された、特定非営利活動法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)が行う研修事業の推進に向けて、官民あげて協力すべきである。

(5)ドクターヘリの離着陸体制の整備について

  現在の法制度の下では、ドクターヘリは、消防機関等からの要請又は通報に基づき機長判断で離着陸ができるようになっているものの、ドクターヘリが救命率の向上や後遺症の軽減等に大きく寄与していることを考えると、ドクターヘリがより速やかに離着陸できるような体制整備に向けて、関係する規則や高速道路等の着陸基準・手順の改正の必要性、弾力的な運用の可能性等を含めた検討を進め、警察庁、総務省消防庁、厚生労働省、国土交通省等の関係機関での連携強化の下、早急な解決を目指すべきである。

  また、地域救急医療体制の維持やさらなる充実のためには、将来の課題として夜間運航の可能性についても検討するべきである。

(6)円滑な情報伝達の推進について

  ドクターヘリの迅速かつ効率的な運用を図るためには、情報伝達においてドクターヘリと消防機関、警察、高速道路会社等関係機関との円滑な連携が必要不可欠である。

  このためには、消防機関をはじめとする関係機関との連携を強化し、傷病者の重症度等に応じたドクターヘリの迅速な出動要請や安全な着陸場所の確保等といった様々な局面において、メディカルコントロールの活用も含め、ドクターヘリが効果的に活動することを前提とした手順について検討し、整備するべきである。

(7)助成金交付事業の支援について

  「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」に規定されている助成金交付事業を行う法人として特定非営利活動法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)が登録されたが、この事業が円滑に推進されるよう、政府としても積極的に広報するとともに、広く国民から寄附を募るなどにより、官民あげて国民全体として支援の輪を広げていくべきである。

(8)診療報酬に係る検討について

  「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」の附則において、「政府は、この法律の施行後三年を目途として、~<中略>~ 救急医療の提供に要する費用のうち診療に要するものについては、健康保険法 ~<中略>~ の規定に基づく支払について検討を行い、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」としており、国は、早期に具体的な検討を進めるべきである。

<参考資料>

ドクターヘリ推進議員連盟勉強会開催一覧

第1回 平成21年3月17日(火)16時~ 参議院議員会館特別会議室

    議事:「ドクターヘリの効果等について」

    講師:日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター長  益子邦洋先生

第2回 平成21年4月7日(火)16時~ 参議院議員会館特別会議室

    議事:「ドクターヘリの運航について」

    講師:社団法人全日本航空事業連合会ヘリコプター部会

       ドクターヘリ分科会委員長  越智信夫氏

第3回 平成21年5月12日(火)16時~ 参議院議員会館特別会議室

    議事:「NPO法人MESHサポートの取り組みについて」

    講師:NPO法人MESHサポート理事長  小濱正博先生

        (沖縄県北部地区医師会病院救急部長)

第4回 平成21年6月4目(木)16時~ 参議院議員会館特別会議室

    議事:「地域医療連携とドクターヘリ」

    講師:日本医師会常任理事  石井正三先生

第5回 平成21年6月11日(木)16時~ 参議院議員会館第4会議室

    議事:「HEM-Net助成金交付事業構想の概要について」

    講師:認定NPO法人HEM-Net  國松孝次理事長

第6回 平成21年6月23目(火)14時~ 参議院議員会館第6会議室

    議事:「ドクターヘリの離着陸(離島・へき地・高速道路本線上

        など)について」

    講師:久留米大学医学部救急医学講座  坂本照夫教授