県が昨年八月に導入したドクターヘリが、冬季に搬送先病院のヘリポートが積雪で使えず、他の病院に搬送先を変更した事例があったことが分かった。昨冬は例年より降雪が少なかったものの、医療関係者からは、今冬以降に向けて病院ヘリポートの融雪装置の整備に県の支援を求める声が上がっている。(豊田直也)
県医務課によると、ドクターヘリを受け入れているのは、共同運航する岐阜県内の三病院も含めて二十病院。このうち黒部市民、県立中央(富山市)、富山大付属(同)、富山市民、高岡市民、市立砺波総合、久美愛厚生(岐阜県高山市)の七病院にヘリポートがある。ただ、本紙が確認したところ、県立中央、高岡市民以外の五病院にはヘリポートに融雪装置がない。積雪時は人力で除雪する必要があり、雪が降り続けば、ヘリが着陸できない時間帯が出るという。
ヘリポートがない病院は、近くの土手など敷地内外に着陸させている。
現状はヘリポートの融雪装置に県や国の補助はない。そのため、十七日に県立中央病院であった運航調整委員会では、医師らから「今年は雪が少なかったが、ヘリポートの融雪装置の充実が必要だ」「県の支援制度を設けてほしい」といった意見が出た。県医務課は「まずは県内病院の融雪装置の設置状況を確認し、雪が多い新潟県や北海道などの支援状況も調べたい」としている。
ドクターヘリの出動は、今年三月末までに二百八十八件。搬送事例を分析したところ、ヘリがなかった場合と比較し、平均で三十一分早く治療が開始でき、ヘリがなかった場合よりも二十一人多く救命することができた。
(2016年5月27日中日新聞)