宮崎県と宮崎大学は今年12月から、山間部の事故などで負傷者が出た際、県の防災救急ヘリから医師を直接現場に降ろし、治療に当たる取り組みを始める。同県は森林面積が76%に上る「林業県」で作業中のけがも多いが、ドクターヘリの着陸地点がなかったり、救急車両の到着に時間を要したりして治療が遅れるのが課題だった。九州初の活動で、難所での救命率アップを目指す。
県によると、宮崎大医学部付属病院の医師が防災救急ヘリに乗り、県防災救急航空センターの隊員とワイヤで降下する。県のドクターヘリには、上空から地上に人を降ろしたり負傷者をつり上げたりする装置がないため、防災救急ヘリを活用。国内では高知県と和歌山県に次ぐ取り組みという。
宮崎県内の林業就業者は2690人(2010年)、林業産出額は全国5位の約209億円(13年)で、林業作業員が伐採した木の下敷きになるなどの事例が相次いでいた。山間部では救急隊員が負傷者を抱えて救急車両に乗せ、ドクターヘリまで運ぶ必要があり、治療開始まで約1時間を要することもあるという。
通報を受けた各地の消防本部と県、宮崎大が情報をやりとりし、現地への到達が難しいと判断すれば防災救急ヘリを出動させる。医師の降下訓練も始めており、県消防保安課は「いち早く医療行為を行えるので救命率向上につながる。登山者の滑落や、東九州自動車道での多重衝突事故などにも役立てたい」と話している。
(2015年10月15日 西日本新聞)