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〈社説〉ドクターヘリ連携 搬送要件緩和すべきだ〈秋田さきがけ新聞〉
2013.09.25

  秋田、青森、岩手3県によるドクターヘリ広域連携で鹿角市など県境の自治体が、自県ヘリで対応できないなどの場合に限らず、隣県の基地病院に出動要請できるよう要件緩和を求めている。緩和により運航時間が短縮されれば、いち早い患者の救命医療が可能となるだけに、3県は緩和への取り組みを進めるべきだ。

 ヘリの基地病院は本県が秋田赤十字病院(秋田市)、青森県が県立中央病院(青森市)と八戸市立市民病院、岩手県が岩手医科大付属病院(矢巾町)で計4機を運航。今春からの広域連携の試験運航では本県ヘリが岩手県八幡平市へ出動、青森県のヘリが鹿角市の患者を岩手県に搬送したが今月18日現在、2件にとどまっている。

 3県の覚書では隣県への出動は「自県ヘリだけで対応できない場合」「自県ヘリが出動できない場合」に限られるが、県境では隣県からの方が早いケースもある。気象条件次第だが、県によると鹿角市までは秋田市の基地病院から20〜30分かかるのに対し、八戸市や矢巾町からだと15〜20分で済むという。

 今回の要請はこうした実情を受けてのことだ。鹿角市の児玉一市長らは「最も近い基地病院から出動してくれれば市民の安心感につながる」と県に訴えた。要請は住民の命を預かる自治体として当然の主張であり、3県は広域連携にどう取り込むか、協議するべきだろう。

 県外の広域連携協定を見ると、中国地方の5県では近い基地病院からの出動が原則。広島県東部の福山市まで広島市からは20分余りだが、岡山県の基地病院からだと15〜20分であり、福山市の消防は岡山県に出動を要請する。広島県の場合は5月から8月までの出動110件のうち、4分の1近い26件が島根や山口など隣県への出動。一方の広島県北部では基地病院が近い島根県に要請している。

 自県ヘリが出動できない場合に限らず、最短時間での運航を徹底する中国地方の連携は、「空飛ぶ救命室」と呼ばれるドクターヘリの効果を最大限に引き出す取り組みといえよう。

 北東北3県で要件緩和となれば、さまざまな課題があることも事実。どの基地病院が隣県のどの地域をカバーするか、他県へ出動中に自県内から要請があった場合の対応などを決めておかなければならない。

 1機当たり年間約2億円の予算を国と県が半額ずつ出している運航費用をどうするかという問題もある。覚書では隣県への出動経費は当面、ヘリを飛ばした県側の負担。このため県境の自治体は、負担する隣県に要請しづらいとしており、それを解消する仕組みづくりを進めるべきだろう。

 3県は近く、試験運航の結果を検証した上で本格運航を始める見込み。ドクターヘリ本来の目的を果たすため、現行制度に磨きをかけることが必要だ。

(2013年9月25日 秋田さきがけ新聞)