医師や看護師が搭乗して救急現場に駆け付けるドクターヘリの県内運航開始記念シンポジウムが、宮崎市内のホテルであった。元警察庁長官で、NPO「救急ヘリ病院ネットワーク」(東京)の国松孝次理事長が講演し「命の危機管理は東日本大震災後の社会にとって最大の課題。地域間の命の格差を埋めるにはドクヘリが必要だ」と訴えた。
講演で国松理事長は、長官時代に自身が狙撃された95年の殺人未遂事件が、ドクヘリ普及活動に関わるきっかけだったと明かした。「後ろから鉄砲で撃たれたが、30分で搬送され助かった。医者に礼を言うと『東京だから救急車が早めに着いて助かった。地方なら死んでるよ』と言われた。地域に命の格差があると気づいた」
また、08年に愛知県で溺れた男児が、ドクヘリで静岡県に搬送され一命を取り留めた例を挙げ「距離をものともせずに患者を最適な病院に運べる。県境も越えていける。ドクヘリでないとできない芸当だ」と語り、県でも運用実績を積み上げ、九州広域で連携できる仕組みづくりをするよう呼びかけた。 (2012年5月11日 毎日新聞)