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ドクターヘリ始動 宮大付属附属病院きょう <朝日新聞>
2012.04.18

医師を乗せ救急現場などに向かう宮崎大医学部附属病院(宮崎市)のドクターヘリの運航が18日、始まる。県内全域を30分以内でカバーでき、県北部の救急態勢が手薄な町村を中心に救命率の向上につながると期待されている。

 「救急医療に大きく貢献できると確信している」。17日にあった運航開始式で、同大の菅沼龍夫学長は意気込みを語った。

 ヘリは、基地病院となる同病院に常駐。消防機関などからの要請を受け、医師と看護師を乗せて出動する。運航は午前8時半から日没の30分前まで。公園や学校の校庭など、全市町村に計279カ所の離着陸場所を確保した。搬送患者は同病院のほかにも、約50の医療機関で受け入れに協力する態勢も整えた。運航費用は年約2億円で、県と国が半分ずつ負担する。

 期待される効果は、救命率の向上だ。厚生労働省の研究によると、全国でドクターヘリが導入された地域では、導入後は患者が死亡に至るケースを27%、重度の後遺症が残るケースを45%削減できていたという。

 県北部には消防署「非常備」の町村が7町村あり、通報から各町村内の病院に運ぶだけでも1時間以上かかる場合もある。これら町村は役場職員らが患者を病院に搬送しており、「医師の治療が早まることで住民の安心感も増す」(椎葉村の担当者)と期待している。

 厚労省などによると、ドクターヘリの運航は2001年に岡山県の川崎医大附属病院で始まり、これまでに28道府県で導入。宮崎は29番目となる。欧米では交通事故の犠牲者を減らそうと、1970年前後から日常的な救急活動に採り入れられていたという。

 消防署がない非常備町村は、ヘリ受け入れの準備を進めている。役場職員や消防団員による出動要請の判断や離着陸の支援のあり方などの課題も残る。

 椎葉村は昨年、久留米大病院に消防団員ら約20人を派遣し、ドクターヘリについて学んでもらった。容体がわかりにくい脳梗塞(こう・そく)などの症状を見分ける「判断基準」も作成し、今後も研修をしていく。日之影町は消防係の職員が1~3月、延岡市消防本部で現場研修をした。

 西米良村や諸塚村は、看護師や医師が救急搬送車に乗り現場に駆けつけることもあるため、医師の判断で要請する考え。美郷町は「一度、町の病院に運び、医師に相談するケースも考えられる」と話す。

 高千穂町は、平日の日中は救急救命士が役場で勤務しており、「要請の判断は的確にできる」と話す。問題は、ヘリの着陸支援だ。

 町内の離着陸場所は12カ所。場所によっては、ヘリの方が役場から向かう支援隊員よりも早く到着する可能性もある。町の担当者は「現場近くの消防団員らの力を借りて対応したい」という。

 ヘリの運航を検討するため大学などでつくる部会は、今後も現状を聞き取りながら、改善点を探る考えだ。(北村有樹子)
(2012年4月18日 朝日新聞)