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ドクターヘリに広告 <読売新聞>
2010.03.11

日本医大千葉北総病院(印旛村)が、ドクターヘリに企業広告を掲載する取り組みを試験的に実施している。制度上、国庫補助金の対象外となるヘルメットなどの装備品・消耗品の購入費を確保するのが狙い。広告掲載は担当医師が留学先の英国で実施されているのを知り、国内に戻って企業などに協力を呼びかけて実現した。厚生労働省は「公益性の高いヘリだが、広告の掲載は問題ない」としており、全国的にも珍しい試みという。

 ドクターヘリ事業は、病院が国と県から1機当たり年間計1億7000万円を支給されて運営する国庫補助事業。ただ、補助の対象は人件費や燃料費などに限られており、機内で医師らが着用するマイク付きヘルメット(30万円)やユニホーム(9万円)の費用は、病院が負担している。

 「夏の機内はサウナ状態。それでもヘルメットを使い回さねばならない現状を変えたかった」。月に3度のペースで搭乗している救急医・松本尚医師(47)はそう語る。同院では医師・看護師計30人体制で任務に当たっているが、ヘルメットの数はわずか四つ。「できれば1人1個は持ちたい」。松本医師には、良い医療サービスを提供するための環境を整えたいという思いがある。

転機は2008年。留学先のロンドンで、ドクターヘリの機体や医師のユニホームに広告が満遍なく掲載されている光景に驚いた。「日本でもやれるのでは」。帰国後、大手自動車会社などを自ら回り、自身の思いや海外の事例を訴えている。そうした中、手を挙げたのが都内の生命保険会社だった。

 広告効果は未知数。年間約700回の出動数を誇る同院のヘリだが、ある広告会社には「空を飛ぶ物に広告の価値はない」と一蹴(いっしゅう)され、手を挙げた生保会社も「社会貢献であり、広告は掲載しなくていい」という申し出だった。松本医師は「寄付ではメリットが双方に生まれず、取り組みも発展しない。頼み込んで、掲載してもらうことにした」と話す。今回は寄付名目で100万円を受け取り、昨年12月から機体の後部に社名の掲載を始めた。実際の広告料の設定は、今後の検討課題となる。

 掲載を了承した厚労省は、「公益のイメージにそぐわないものや、薬品会社など医療への影響力が強い企業はNG」とするが、前例はなく、現時点で明確な基準はない。また、県は「有用な取り組み。今後、病院が広告を募る際には、その周知に対し出来る限りの協力をしていきたい」と前向きな姿勢を見せている。

 広告効果を上げるため、松本医師は今後広告が載ったヘリのポスター製作も検討しており、「必要な費用が足りないなら、自分たちで知恵を絞って生み出せばいい」と、この取り組みを本格化させていく考えだ。(2010年3月10日読売新聞)