ドクターヘリが運航を始めてから20年あまり。黎明期から普及に携わってきた早川達也さんが、聖隷三方原病院に赴任したのは2005年のこと。救急医であり、現役のフライトドクターとして今もヘリに搭乗します。
「“早く治療をしないと、助かる人も助からない”というのは、ドクターヘリの基本的なスタンス。自分としても院内で患者さんを待つだけよりも、積極的に外に出て患者さんを診たい。ずっとフライトドクターとして飛び続けたいですね」
現場ではとっさの判断が必要な場面が多く、それもその都度、状況が異なります。マニュアルでは対応しきれない世界であり、それだけにフライトドクターとしての実力が試されます。
「正解は一つじゃない、ということ。どんな方法であっても助けられればいいんです。マニュアルや他人に頼っているようでは、まだ半人前です。自分で判断し、自分で行動し、責任を取る。自立ができて始めて一人前のフライトドクターといえるのではないでしょうか」
聖隷三方原病院がドクターヘリを導入したのは早く、2001年のこと。以来、右肩上がりだった出動回数はここ数年、落ち着いています。これは、要請にはできるだけ多く応え、一人でも多くの人にドクターヘリの存在を知ってもらうというステージから、ドクターヘリの出動が必要かどうか、その適応を考えていくステージに入ったためだといいます。
「ドクターヘリの運航が始まったのは、救急医学が大きく変わった時期でもありました。でも今は高齢化、医療崩壊などの問題が指摘されています。ヘリは安全な乗り物ではなく、航空機事故というリスクを伴います。両者のバランスを考えたときに、“ヘリを飛ばさなくてもよい事例”のときは無理に出動しないことも重要。それらについては今後の検証が必要でしょう」
今の時代、救急は社会のセーフティネットだという早川さん。地域に必要とされるドクターヘリは何か、今も模索しています。