重症患者の命を救い社会復帰させるためには、<一般の人からの通報→救急隊→救急医→外科医→リハビリ医>という流れを、いかに早められるかが重要だと矢野さん。
「この場合、救急医は3番走者でしかありませんが、ドクターヘリを用いることで2番走者にもなりうる。高いレベルの救急医療につなげられます」
重症患者の命を救い社会復帰させるためには、<一般の人からの通報→救急隊→救急医→外科医→リハビリ医>という流れを、いかに早められるかが重要だと矢野さん。
「この場合、救急医は3番走者でしかありませんが、ドクターヘリを用いることで2番走者にもなりうる。高いレベルの救急医療につなげられます」
「駆けつけたら河原のゴツゴツした石の上に寝かされていて、そこで初期治療をしなければなりませんでした。病院のベッドの上でしか治療を行っていなかったので、状況が何もかも違う。持っている手技を変えなければ通用しないことを痛感しました」
同行する医療者は看護師1人だけ。使える医療道具類も限られています。今まで経験のなかった消防本部指令室との連絡も必要になるなど、初めての経験に学ぶところが多かったと矢野さん。
「ドクターヘリは院外活動、病院前診療といわれますが、病院内での医療とまったく違うものなんだなと。逆にこうした医療こそ求められていると思いました」
聖隷三方原病院高度救命救急センターには現在、8人の救急医がいますが、ほぼ全員がフライトドクターを目指し、7人がフライトドクターとして活動しています。矢野さんが同院に来たのは医師になって10年目のとき。やはりフライトドクターになるのが目的でした。
「出身の長崎は離島が多く、自衛隊のヘリが患者さんを搬送していた。そこでヘリが医療に役立つことを知りました。大学の派遣で浜松の医療機関に来たときに聖隷三方原病院がドクターヘリを運航していると知り、最初に患者さんを診る立場としてかかわりたいと思ったのがきっかけです」
「何をしているかというと、“判断”です。目の前の患者さんにはどんな治療が必要で、どこに搬送すればいいのか、それを決めるのがフライトドクターです」
そのために矢野さんが必要だと考えるのが、「対応力」「マネジメント力」「広い視野」の3つ。これらは時として高い手技スキルよりも重要になるのです。
「無線で伝わる情報は不確かで、現場に行かないとわからないことも多い。だからそこで広い視野が求められますし、現場の状況に合わせて患者さんにベストな治療を行うためには高いマネジメント力が必要になります」
「自分の力が試されているわけです。困難な現場に遭遇したら、もっと技術が欲しいと思う。一度も自分の技術に満足したことはありません。スムーズにいった現場でも、『もしケガ人が複数だったら同じようにできたか』とか、『ケガをした部位が致命的なところだったらどうするか』とか、常に考えます」
ドクターヘリに限らす救急の現場は体力勝負です。常に質の高い医療を提供するために、矢野さんは健康に気をつかい、体力維持を心がけているといいます。
「本音を言うと、365日フライトドクターをしていたい。後輩が育っているから回数を減らさなきゃいけないんだけどね……」