県内のドクターヘリが2機態勢となって2年目(2012年10月~13年9月)の出動件数は計962件(転院搬送含む)で、1年目(11年10月~12年9月)に比べ44・7%増えたことが6日、県などへの取材で分かった。運航している信州大病院(松本市)、県厚生連佐久総合病院(佐久市)や県などは、ドクターヘリが知られてきたことに加え、119番通報など消防への連絡段階で重症を示す言葉があればヘリを要請する方式が定着してきていることも増加の背景にあるとみている。
県内では、2011年10月から信大病院のヘリが運航を始め、佐久総合病院との2機態勢になった。今年9月30日まで1年間の出動件数の内訳は、主に中南信地域担当の信大病院が543件(前の1年間比40・3%増)、主に東北信地域の佐久総合病院が419件(同50・7%増)と、いずれも大幅に増えた。
このうち救急現場出動(出動後に軽症と判明してキャンセルした件数を含む)は信大病院が445件、佐久総合病院が382件。既にどちらかに出動要請があってもう1機が応援出動した件数は計82件と、1年目(57件)の1・5倍に増えた。患者の転院搬送では信大病院のヘリは98件、佐久総合病院のヘリが37件だった(いずれも県外への出動含む)。
一方、どちらも対応できなかった件数は27件、全体に占める割合は3・0%で、1年目(2・6%)とほぼ同じだった。
消防の現場では「遠い所までいち早くドクターを運べる人命救助の有効な手段の一つという認識が広まっている」(松本広域消防局)との声があり、佐久総合病院の岡田邦彦・救命救急センター部長は「敷居が高かったヘリが、救急医療になじんできたのではないか」と話す。
2機態勢1年目の途中の12年4月から導入された「キーワード方式」は、消防本部により早くヘリを呼んでもらうために、「車に閉じ込められている」「胸が突然ひどく痛い」など特定の言葉があった場合、すぐにヘリを要請する仕組みだ。
北アルプス広域消防本部大町消防署第2分隊長の栗林宏治(こうじ)さんは「管内には脳外科を掲げる医療機関がなく、安曇野市や松本市の医療機関を頼らざるを得ない。脳疾患に関する言葉でドクターヘリが出動できれば早期治療が可能で、結果的に軽症と分かっても多くの命が救える」と、キーワード方式を評価する。長野市消防局の岩倉宏明局長も「119番通報が交通事故などによる外傷なら消防でも判断しやすいが、病気などは判断が難しい。通報を受ける側に基準となるキーワードがあるのは助かる」としている。
県、信大病院、佐久総合病院、消防などは定期的に運航状況や救急内容を検証している。信大病院高度救命救急センターの岩下具美(ともみ)准教授は「消防本部がヘリの利点を踏まえ、救急搬送の選択肢に捉えてくれている」と指摘し、今後も救急医療の現場で広がることを期待している。(2013年10月7日 信濃毎日新聞)